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「お前、私にこれを食べろと言ったよな。こんなものを」
「強要はしてないし同意も求めてないよ。食わないなら返せ」
手を差し出すと彼女は少し考えてからパンを口に含んでしまった。
一口で食べてしまったので噛みずらそうに、時に戻しそうになりながら食べている。
「…思っていたよりも悪くない」
歯茎にカスが残っているのか頬を不自然に動かしながらの言葉。
「だが美味ではない」
「それはよかった」
半ば呆れのようなものを抱いていた。とにかく面倒な気持ちが沢山で、早く日課の流れ星探しに専念したい。
それでも彼女は話しかけてくる。
「お前はここで何をしている」
同じ言葉を返してやった。
「先に答えろ」
同じ言葉を返す。
「私はここで貴様に問いかけているのだ」
同じ言葉を返す。
「二番煎じは芸がないぞ」
「そうだな」
今日はとてもよく晴れている。雲一つなく、また街灯の光もなく、新月ゆえに月明かりもなく。
星だけが輝いている。
なんて綺麗なのだろう。
そして、なんてつまらないのだろう。
何時間も見ていても変化のひとつもなく、ただ太陽が昇るまで気がつかないほどの遅さで動き続けるだけのもの。
だから変化を探そうと、星が落ちるのを待つ。を見ている」
「嘘だな。もしくは言葉を間違えている」
「流れ星を探している」
今日も星は落ちない。
「それも嘘だ。お前は待っているだけだろう」
「…私は貴様に問いかけている」
「その答えはこうだ『答える必要はない』」
昨日も星は落ちなかった。その前も。
「una。次のスキンシップだ。キャッチボールをするぞ」
明日は落ちるだろうか。
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