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『やっと終わった…。』
まだ夜にも日中の暑さが残る8月中旬の夜。
光熱費削減の為に明かりと冷房を最小限におさえたオフィスの中で、1人の男が椅子の背もたれに体重を預けながら物思いに耽っていた。
『んだょ…誰も残ってねぇじゃん。に、しても毎週毎週よくこんな時間までやる仕事あるよな…。』
男が1人頭の中で愚痴るのもしょうがない。
今の時刻は終電があと30分もすればなくなってしまう時間。
普段ならまだしも今日は金曜日。
となると、妻子のある同僚や上司は翌日の家族サービスの為に定時や残業しても1時間やそこいらであがってしまう。
オフィスの中で1人独身で週末に特に予定もあるはずのないこの男…須藤 剛(スドウ ツヨシ)が金曜の残業を請け負うのが、ここ最近オフィスでは暗黙の了解になっていた。
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