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徐々に意識が覚醒していく。
鼻につく、ツンとした刺激臭で瞼を開いた。
「……」
「あ、目が覚めましたの?」
「……」
頭が釈然としない。視界に映る物が、輪郭を曖昧にしていた。
「あのー、翠公平(みどりこうへい)さん、大丈夫ですこと?」
外界の光に目を細めていると、声がかけられその方角を振りむく。
ボンヤリと膜のかかった寝惚け眼に、おぼろげな誰さんの姿が映った。
「頭は痛みます? 失礼ながら公平さんが寝ている間、勝手に後頭部を診させていただいた所、瘤が出来ていましたわ。一応水枕で応急処置をしましたが……」
大気中から水面を眺めたような頼りない視界の中、誰かさんが肩を落とす。
とりあえず誰かさんは置いといて、ここがどこなのか周囲を一瞥してみる。
辺りを見回して解ったが、どうやらここは保健室のようだ。僕は今、白いベッドに横たわっている。木造の部屋全体が白色に装飾されており、薬品特有の刺激臭がほのかに感じれた。
「だ、大丈夫ですの? 公平さん、随分うなされていましたけれど」
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