困った、転校生

10/60
前へ
/68ページ
次へ
 徐々に意識が覚醒していく。  鼻につく、ツンとした刺激臭で瞼を開いた。 「……」 「あ、目が覚めましたの?」 「……」  頭が釈然としない。視界に映る物が、輪郭を曖昧にしていた。 「あのー、翠公平(みどりこうへい)さん、大丈夫ですこと?」  外界の光に目を細めていると、声がかけられその方角を振りむく。  ボンヤリと膜のかかった寝惚け眼に、おぼろげな誰さんの姿が映った。  「頭は痛みます? 失礼ながら公平さんが寝ている間、勝手に後頭部を診させていただいた所、瘤が出来ていましたわ。一応水枕で応急処置をしましたが……」  大気中から水面を眺めたような頼りない視界の中、誰かさんが肩を落とす。  とりあえず誰かさんは置いといて、ここがどこなのか周囲を一瞥してみる。  辺りを見回して解ったが、どうやらここは保健室のようだ。僕は今、白いベッドに横たわっている。木造の部屋全体が白色に装飾されており、薬品特有の刺激臭がほのかに感じれた。 「だ、大丈夫ですの? 公平さん、随分うなされていましたけれど」
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加