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カタカタ、パキッ
屋敷に入ってからあちこちで変な音が聞こえてくる。誰かが走る音、枝が割れるような音。それら全てはラップ音と呼ばれる心霊現象である。
「誰かいませんか?」
誰もいないことはわかっているのだが、無言でいるとこの恐怖に押し潰されてしまう。
囲炉裏を横切り、襖を開け隣の部屋に入る。
その部屋は四畳半くらいの広さで、壁一面を本棚が埋めつくされている。どうやら書斎のようだ。
美古都は、机の上にポンと一冊だけ置かれている本を手にとる。
本の表紙には『紫境村について』と書かれていて、本の半ばからちぎられたように破れていた。美古都はそっとページをめくる。
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