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ガバッ!
少女は、勢いよくベッドから身を起こす。
「はぁ、はぁ、また……この夢……」
起きた少女は汗でびっしょりと濡れていた。
少女、朱月美古都(あかつき みこと)にとってこの夢は最愛の人物、村崎燈眞(むらさき とうま)を事故でなくしてしまった1ヶ月前から毎晩のように見ている悪夢であった。
「私が燈眞を……」
ポツリと美古都は呟く。
燈眞が死んでしまったのは自分のせいである。美古都はそう感じていた。だからこそ、あんな夢を毎晩のように見てしまうのだ。
「ゴメンね……燈眞。私も……そっちに行くからね」
美古都はベッドから起き、寝汗を洗い流すためにシャワーを浴び着替える。
これから死のうと考える人間の大半は自分の身の回りを整頓してから自殺をすると言う。
恐らくは他者が自分の部屋に入ってきても大丈夫なようにであろう。そしてまた美古都も例外にもれず、部屋の整理を済ませていた。
美古都は幼い頃に両親をなくし、その後は祖母が一人もで育てていた。しかし、その祖母も二年前に他界している。そんな絶望の淵から彼女を救ってくれたのが燈眞だった。だが彼ももうこの世にはいない。
「さようなら……」
バタン
扉を閉め彼女は何一つ持たずに家をでる。
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