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ポツッ、ポツッ
昼間でさえ薄暗い森の中に雨の滴が落ちてくる。最初は気のせいと思っていたが、雨足は徐々に強くなっていく。
ザーー
そして、バケツをひっくり返したような土砂降りになってしまった。
「うそ、どこかで雨宿りできないかな」
何も持ってきていない美古都は勿論傘など持っていない。しょうがなく、雨宿りできる場所をもとめ、森の中を奥へと走っていく。しかし、森の中で雨宿りできる場所などなく美古都は、夜のように暗い森の中を走り抜ける。
突然視界がひらけた。
美古都がたどり着いたその場所は、紫陽花畑を彷彿とさせる村であった。
盆地となっている村のあちこちに紫陽花が咲き誇り、雨の滴でとても綺麗であった。だが、遠目に見ても人の気配は感じられない。
「どうしよう……」
人の気配を感じられないこの村で雨宿りをしようか迷っていた。彼女の直感がこの場所は危険だと告げている。
雨足は多少弱くなってはきたが、このままでは風をひいてしまう。
「背に腹は変えられないか」
しょうがなく彼女はゆっくりと村に向かって歩いて行く。
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