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「ロク、やっと一緒にいれるね。」
「…。」
今、閉め切った部屋の中で雄が二人。抱き合っている。…しかし。
「ロク。もう話さないから。」
ロクと呼ばれた雄の背中には数本の刃物が刺さっている。ロクは息絶えていた。雄はロクを愛しそうに抱き締めている。
普通なら厭わしく思うだろう。しかし、これはこの世界では当たり前なのだ。愛のために獣人を殺めるのは法に認められている。
「ん。キスするね。」
雄はロクに口付けをする。ロクの口内に舌を入れて卑猥な音を発している。ロクの背中からは血が止めど無く流れている。
雄はロクの背中に刺さっている刃物を握り締め、ロクの屍に更に深く…、更に深く…。
部屋には卑猥な音と、何かをかき混ぜる音。そして。
「大好きだよ。ロク。ずっと離さない。ずっと僕の物だよ。ずっと…。」
この声が途切れた時、部屋にはもう原型を留められずに溶けたロクと、溶けたロクに溺れるように倒れていた雄がいた。
そして腐敗した死臭と奇妙なメッセージが…。
“これが愛なら、俺は誰も信じない”
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