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どうして、僕の主様はこんなにおっとりしてるんだろう? それはいつしか僕の中の“当たり前”として頭の中に入っていた。
まだ雨が降っているようだ。今日も主のイリア様がびしょ濡れで帰ってきたからだ。
それはそうと僕の主様は“マインド・コントロール”が使える。唯、その言葉は何を意味してるか判然とは知らないんだ。
主様は僕を愛してくれている。奴隷として、愛玩具として、恋人として。屈折した愛情かもしれないけど愛してくれている。
それは確りと分かる。毎日抱き締めてくれて、キスしてくれて…。外の世界には一度も触れさせてもらえないけど、何不自由無い。
外に出て、外の世界を知ろうとも思わない。
唯、最近、主は何かに焦っている。何も言ってはくれないけれど僕には分かる。分かるんだ…。僕には。
「シルビア。おいで。」
「ガフ!」
赤い首輪の下を撫でる犬獣人が僕の主様。そして彼よりも大きく逞しい虎獣人が僕の兄、シルビア。シルビアは甘える様に主様に密着する。
「今日はこれだけだが、明日はもっと取って来る。調理は任せる。」
主様はシルビアに獣人を与える。するとシルビアの眼の色が変わった。獣人に恐る恐る手を伸ばす。
「俺の遊び道具だ!!!」
目が血で赤く染まった。シルビアは朦朧とした眼の獣人を犯し始める。爪を獣人の皮膚に喰い込ませた。
獣人の意識が判然と戻っても逃げられないように。獣人の皮膚から血が滴り落ちる。獣人の方も恍惚とした笑みを浮かべ、喘ぎ狂い出した。嗚呼…。もう戻れないね。
「主様。兄はもうあのままですか?」
「そうだね。彼は自分主義だから。」
主様は僕に兄貴には絶対に見せない笑顔で僕を見る。そして頭を撫でてくれた。キスもしてくれた。僕は更に甘えて見せる。だけど、これ以上望んじゃいけない。所詮、主と家畜の関係。深くなってはいけない。甘い関係は、浅く、消え逝くようにしないと…。
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