230人が本棚に入れています
本棚に追加
「これが野球だよ」
見ると、四角い箱――テレビの中には、小さな人間がたくさん入っていて、ボールを投げたり走ったりと、忙しそうに動き回っていました。
時々、長い棒を持った人がボールを高く打ち上げると、それを取り囲むたくさんの人間たちが割れんばかりの大騒ぎをしていました。
「ルイ、これを見て」
ケンタが画面に映る小さな四角い白いものを指差しました。
「これの名前も、『るい』って言うんだよ」
「わぁ!」
僕は驚きました。
「同じだ!」
「そうだね。とてもいい名前だよ」
ケンタはにっこりしました。
「ルイも絶対に野球をやってみたほうがいいよ!面白いよ」
「そうなの?」
「うん!最高だよ!ぼくも病気が治ったら、絶対に野球をやるんだ」
僕の心が、チクンと痛みました。
ケンタの病気は治らない……。
だって一週間後には、僕がケンタの命を終わらせなければならないのですから。
最初のコメントを投稿しよう!