230人が本棚に入れています
本棚に追加
僕は死神のくせに、人の死を見るのが苦手でした。
死神が鎌を振り下ろすと、それまで動いていた人間が、一瞬でただのモノになってしまう……
魂は生きていると分かっていても、やはり死の瞬間は残酷な映像でしかありません。
ましてやそれを自分の手で操るなんて……
僕には出来ません。
「どうしたの?」
黙りこくった僕の顔を、ケンタが覗き込みました。
ケンタと目が合った瞬間、僕の脳裏にケンタの死顔が浮かびました。安らかな、白い顔が……
「ごめん」
やっとの思いでそう言うと、僕はケンタの前から姿を消しました。いや、逃げ出したんです。
こうして、僕の任務最初の日は幕を閉じました。
最初のコメントを投稿しよう!