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ガチャッ
突然、静かな病室にドアノブの音が響きました。
「お母さんだ!」
ケンタはそう言うと、そろそろとベッドに戻っていきました。
そしてケンタがベッドに潜り込むと同時に、ケンタのお母さんが病室のなかに入ってきました。
ケンタのお母さんは、髪の長い優しそうな顔をした人でした。ただ、お腹が普通の人とは違って、大きく丸く膨らんでいました。
「ケンタ、遅くなっちゃってごめんね」
お母さんが言いました。
「検診に時間が掛かっちゃって」
お母さんはその大きなお腹を愛しむように撫でました。
「大丈夫だよ」
ケンタがお母さんに言いました。
「今日は友達が来てくれてるから」
ケンタは僕の方を見てにっこりしました。
「お友達?」
お母さんは不思議そうな顔をして病室中を見渡しました。その目が一瞬僕を捉えましたが、お母さんは気が付かないようでした。
「誰もいないじゃない」
「え?」
ケンタは僕の方を見ました。僕は首を振りました。
「そうか……」
ケンタは少し拗ねたような顔をしました。
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