3.赤ちゃん

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      ガチャッ       突然、静かな病室にドアノブの音が響きました。   「お母さんだ!」   ケンタはそう言うと、そろそろとベッドに戻っていきました。   そしてケンタがベッドに潜り込むと同時に、ケンタのお母さんが病室のなかに入ってきました。   ケンタのお母さんは、髪の長い優しそうな顔をした人でした。ただ、お腹が普通の人とは違って、大きく丸く膨らんでいました。   「ケンタ、遅くなっちゃってごめんね」 お母さんが言いました。 「検診に時間が掛かっちゃって」   お母さんはその大きなお腹を愛しむように撫でました。   「大丈夫だよ」 ケンタがお母さんに言いました。 「今日は友達が来てくれてるから」   ケンタは僕の方を見てにっこりしました。   「お友達?」   お母さんは不思議そうな顔をして病室中を見渡しました。その目が一瞬僕を捉えましたが、お母さんは気が付かないようでした。   「誰もいないじゃない」   「え?」   ケンタは僕の方を見ました。僕は首を振りました。   「そうか……」   ケンタは少し拗ねたような顔をしました。
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