3.赤ちゃん

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  「お母さんには君が見えないのかなぁ?」   りんごを一切れ噛りながら、ケンタが訊ねました。   「たぶん」 僕は答えました。 「大抵の人には、僕は見えない」   「そうなんだ……」   りんごを噛る、シャリッという音が小気味よく病室に響きました。   「ねぇ」 ケンタが言いました。 「赤ちゃんには君が見えるかな?」   「赤ちゃん?」   「そう、赤ちゃん。お母さんのお腹を見ただろう?もうすぐ、弟か妹が生まれるんだ!」   ケンタは嬉しそうに笑いました。   「早く生まれてこないかなぁ!ぼく、絶対弟がいい。大きくなったら、一緒にキャッチボールができるしね!」   「もちろんルイも一緒に!」と付け加えながらはしゃぐケンタを、僕は複雑な思いで見ていました。   そして、さっきのお母さんの言葉を思い出しました。
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