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「お母さんには君が見えないのかなぁ?」
りんごを一切れ噛りながら、ケンタが訊ねました。
「たぶん」
僕は答えました。
「大抵の人には、僕は見えない」
「そうなんだ……」
りんごを噛る、シャリッという音が小気味よく病室に響きました。
「ねぇ」
ケンタが言いました。
「赤ちゃんには君が見えるかな?」
「赤ちゃん?」
「そう、赤ちゃん。お母さんのお腹を見ただろう?もうすぐ、弟か妹が生まれるんだ!」
ケンタは嬉しそうに笑いました。
「早く生まれてこないかなぁ!ぼく、絶対弟がいい。大きくなったら、一緒にキャッチボールができるしね!」
「もちろんルイも一緒に!」と付け加えながらはしゃぐケンタを、僕は複雑な思いで見ていました。
そして、さっきのお母さんの言葉を思い出しました。
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