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「ルイ」
僕は、「どこの子なの?」は無視して、名前だけ答えました。
「わぁ!ルイっていうんだ!いい名前だね!」
男の子は目を輝かせました。
「年はいくつ?」
「分かんない」
僕は肩をすくめました。
「数えたことないから」
「へえー」
男の子は不思議そうな顔をしました。
「君、変わってるんだね。でも、ぼくと同じ10歳位に見えるよ。あ!ぼくはケンタ。健康の健に、太いって書くんだ。まぁ、病気なんだけどね」
ケンタは少し悲しそうに笑いました。僕はなんだか、自分が悪いことをしたような気分になりました。
「ルイは野球好き?」
ケンタが明るい声で言いました。少し、無理したような声でした。
「やきゅう?」
僕は繰り返しました。
「そう!野球!」
ケンタは四角い箱――テレビというんだそうです――の方を向きました。
「野球、知ってるでしょ?」
僕は首を横に振りました。
すると、ケンタはテレビの画面を僕によく見えるようにしてくれました。
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