530人が本棚に入れています
本棚に追加
「今週の土曜日に練習試合があるから来てね♪」
天峰は昨夜見たメールを今朝も確認し、ケータイを閉じた。
『よし…』
服装はこんなものか。学校に行く訳じゃないから私服で良いだろう。
目的地は卓球場。
夏希の期待に少しでも応えたい。そう思っての行動だった。
それだけを考えて卓球場へ向かう。気が付けば卓球場に着いていた。
『…』
目を閉じて耳を済ます。
(流石にここから音は聞こえないか)
パチッと目を開いた天峰は卓球場の扉を開けた。
扉を開けると聞こえてくるピン球の音。
しかし、音だけなら平気だった。
入ってすぐ右に曲がる。
視界に地下へ続く階段と綺麗に並んだ卓球台が飛び込んで来る。
こないだ来た時と違うのは人の数。
見た感じ3~4校は来ているだろう。
見ても平気。
これも夏希の期待に応えたいと思っているからだろうか。
たくさん並んでいる卓球台の中に知った姿。
(あれは…カゲ?)
『よう!』
天峰が火柱を見つけたのと同時に、突然後ろからポンと背中を叩かれた。
びっくりして振り返ると夏希がいた。
『来てくれたんだ』
『あ、あぁ』
笑顔でニコニコ接する夏希に、天峰はあたふたしながら答えた。
『待っててね。今、白玉くん呼んでくるから』
『あ、いや。いいよ』
『なんで?』
『大人しく一人で見たいけん』
そう言って手刷りに寄りかかる天峰。
『ふ~ん…じゃあアタシも』
夏希も天峰の隣で真似をして寄りかかった。
『…』
会話が思い浮かばない。
『ユニフォームさ』
『ん?』
天峰が咄嗟に出した話題は青朋のユニフォーム。
『シンプルやね』
そう言って火柱の後ろ姿を見た。
青朋のユニフォームは白がベース。
両方の肩から袖へ赤と黄色の2本のライン。背中にはダイヤモンド型の青いライン。
ゼッケンはその中心に付けられている。
火柱を前から見ることは不可能だったが、隣で戦っている青い髪の男は正面から見ることができた。
ユニフォームの腹側にも背中同様青いダイヤモンド型のラインが入っていた。
『シンプルでもアタシは気に入ってるよ♪』
夏希は上のジャージのファスナーを開けて、ユニフォームを天峰に見せた。
『ユニフォーム貰ったんだ』
『うん!…浩二の分もちゃんとあるからね』
天峰は暫く間を開けた後『ありがとう』と答えた。
天峰(ありがとう…か)
最初のコメントを投稿しよう!