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天峰は自分で言った台詞が可笑しかった。
なにが"ありがとう"なんだろう?
卓球が出来るようになったわけではない。
恐らく、ラケットを握った瞬間にあの光景が蘇るに違いない。
なのに"ありがとう"。
それは、純粋に夏希への感謝の気持ちだった。
『…ありがとな』
天峰の口元から笑みが溢れた。
『なに~?改まっちゃってさぁ』
天峰は戸惑う夏希に『なんでもないよ』と答えた。
『ところでさ、今日は何処の学校が練習試合に来とると?』
『青朋も含めて6校だよ。地元ばっかりだけど』
夏希の口から出た学校は確かに地元で聞いたことのある学校名ばかりだった。
しかし、その中に天峰の前いた学校である"高丸"中の名はなかった。
少しほっとした。
『今のところ全勝なんだよ。凄いでしょお?』
ニンマリと満面の笑みを見せる夏希。
『今のところって何試合したの?』
『え?まだ2試合だけど…』
言ってどこか落ち込んだ様子の夏希。
それに気付いた天峰はすぐに話題を変えた。
『な、なぁ夏希。青朋って誰が1番強いの?』
『分かんない』
完全に機嫌を損ねてしまった。
(参ったな…)
どうしたものかと困っていると、天峰の元に救世主が現れた。
いや、救世主というのは大袈裟だろうが。
『やっぱり浩二やん!って、そんな派手な頭はお前以外におらんっちゅーねん!』
1人ノリツッコミで現れた部長の白玉。
『白玉くん!試合は?』
『そんなんあっという間に片付けてきたわ』
余裕綽々で三谷に答えて続ける。
『三谷さん。浩二と2人にさせてくれんか?』
ニカッと笑ってのお願いに夏希は『いいよ』と席を外した。
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