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夏希が去ったところで白玉は笑顔を止めた。
『俺の勘は当たっとったみたいやな』
そう言って天峰の後ろで壁に寄りかかって座り込む。
『あー…たぶん、間違ってはなかったバイ。夏希は俺の為に部活に来てる』
『それに応えたくて浩二は今日来たんやろ?』
その問いかけに答える天峰。
『そうばい』
白玉には背を向けたまま。
『夏希のお陰で少しずつだけど、卓球には慣れて来てる。ラケットは握れないだろうけどな』
天峰は右手を握ったり開いたりしながら続けた。
『期待には応えたい』
それを聞いた白玉は立ち上がると天峰の隣にやって来て言った。
『本気で思っとるみたいやな』
『当たり前やろ』
天峰は真剣な顔つきである。
『その答えが聞けてよかったわ。…んじゃ、そろそろ次の試合やから後でな』
白玉は階段へと向かって行った。
『白玉!』
呼び止める天峰。
『頑張れよ』
『季楽でええって!ま、頑張るわ』
白玉と変わるように夏希が戻ってきた。
『何話してたの?』
機嫌は元に戻ったようだ。
『色々だよ』
『何それぇ?つまぁんないの』
先ほどと同様、天峰の真似をして手刷りに寄りかかる。
『今日は何時くらいに帰るの?』
『そろそろ帰ろうと思う』
天峰は掛けてある時計を見ながら答えた。
『もう帰っちゃうの?来たばかりなのに』
『長居しても光景がフラッシュバックしそうやけんね』
夏希は『そっかぁ』と答えて女子更衣室へと入って行った。
そして、なにかを持ってすぐに出てきた。
それを天峰に手渡した。
『なにこれ?』
渡されたのはおしゃれに包装された箱が入った可愛らしい店の袋。
『教えないよ♪帰ってから開けてね。じゃあね』
夏希は渡すのが恥ずかしかったのか、そそくさと下へと行ってしまった。
残された天峰は貰ったプレゼントを手に、家へと帰るのだった。
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