その男"天峰 浩二"

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椅子に座ると少しは肩の荷が降りた気がした。 ふぅっとため息をつく。 目線の先には前の席の女の子の後ろ姿。 ボ~ッと見ていると、隣から小さく千切った消しゴムが飛んできた。 (なんだ!?) 天峰は驚いた表情で隣の席を見た。 そこにいたのは髪の毛を黄色に染めて、ピンクのリボンを付けた可愛らしい女の子。 『女の子の後ろ姿に見とれちゃって!ダメでしょ』 『いや、別に俺は…』 ニコニコしながら話しかけてくる彼女の名札に目をやると"三谷"と書いてあった。 三谷…? 見覚えある名字だった。確か幼稚園の頃、仲のよかった女の子の名字。 『夏希?』 違ってはいないかと、天峰は恐る恐るその名で呼んだ。 『そだよ♪覚えててくれたんだぁ』 三谷は嬉しそうな表情で返した。 『元気にしとった?』 博多弁が出るのは昔からである。 『元気だったよ♪浩二は?』 『うん…まぁまぁかな』 『なにそれ?あまり元気ないみたい』 天峰は前の学校での事故を話そうと思ったが止めた。 『そんなことないよ』とニカッと笑って答えた。 『ならよかった。あ、教科書ないでしょ?今日は見せてあげるね』 『お!サンキュー。助かるよ』 その日は三谷に教科書を見せて貰った。 慣れない環境で緊張気味だった為か、あっという間に昼休みが来た。 クラスメートは席を立って友達と一緒に弁当を食べているが、自分から和に混ぜて貰うのもどうかと思ったので天峰は自分の席で食べることにした。 『浩二そこで食べるの?』 三谷は弁当を持って席を立ち上がったところだった。 『うん』 『誰かと一緒に食べればいいのに…一緒に食べる?』 『え…いいよ!』 三谷の誘いが恥ずかったため、天峰は慌てて拒否した。 『そこまで否定しなくてもいいじゃない!あ、カゲちゃん』 2人の元に火柱が歩みよって来た。 『浩二、一緒に食べない?』 そう言って自分の弁当をヒョイと持ち上げる。 『いいばい』 返事をした天峰はすでに弁当を食べ初めていた。 『三谷さん席借りてもいい?』 『いいよ』 ニコッと笑顔で答えた三谷の返事を聞くと火柱は椅子に座った。
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