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母の気配の残る家。
僕のひとりだけの家族だった母。
五年前。
僕が十歳の時に、父が死んだ。
交通事故だった。
その時十歳だった僕には、それしか分からなかった。
そして四日前、最愛の母が死んだ。
もう治らないと言われた病気だった。
母はただひとり、僕を愛してくれた人だった。
父とは今まで、僕と話をした記憶はない。
唯一僕が覚えているのは、僕が小さい頃、父におんぶされた時の、背中の暖かさだけだった。
何故おんぶされていたのかは、もう忘れた。
そして僕は、独りになった。
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