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「ふぅー……」
小さくため息をつく。
連れてきた沙枝がいないのなら、ここに用はない。
仮にも今は優等生。すぐに戻らなきゃ。
先ほど沙枝が外した自分の髪ゴムを手に取ってみつあみに結ぶ。
……いや、正確には結ぼうとした。
「見ーちゃった!」
突然上から聞こえた声にバッと顔をあげる。
声からして男だが、太陽の光のせいで顔が見えない。
「……天音凪砂ちゃん、だよね?」
私の名前を確認するように呼ぶと同時に、「よっ」と飛びおりてきた。
「……そうですけど。すみません、誰ですか?」
「オレ? オレは、橘結城(たちばな ゆうき)。凪砂ちゃんと同じクラスだよ」
橘 結城?
……あぁ。
「あの女タラシで有名の」
「いやいや、あっちが勝手に寄ってくるだけだって」
こんなやつ同じクラスにいたかな?
疑問に思ったが、今はそんなことを気にしてる場合じゃなかったらしい。
――トンッ
近づいてくる彼を避けるように一歩一歩下がっていた私は、後ろの壁にあたってしまった。
「あーらら」
前から聞こえたその声は何故かとても楽しそうだった。
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