1.秘密。

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  「ふぅー……」  小さくため息をつく。  連れてきた沙枝がいないのなら、ここに用はない。  仮にも今は優等生。すぐに戻らなきゃ。  先ほど沙枝が外した自分の髪ゴムを手に取ってみつあみに結ぶ。  ……いや、正確には結ぼうとした。 「見ーちゃった!」  突然上から聞こえた声にバッと顔をあげる。  声からして男だが、太陽の光のせいで顔が見えない。 「……天音凪砂ちゃん、だよね?」  私の名前を確認するように呼ぶと同時に、「よっ」と飛びおりてきた。 「……そうですけど。すみません、誰ですか?」 「オレ? オレは、橘結城(たちばな ゆうき)。凪砂ちゃんと同じクラスだよ」  橘 結城?  ……あぁ。 「あの女タラシで有名の」 「いやいや、あっちが勝手に寄ってくるだけだって」  こんなやつ同じクラスにいたかな?  疑問に思ったが、今はそんなことを気にしてる場合じゃなかったらしい。  ――トンッ  近づいてくる彼を避けるように一歩一歩下がっていた私は、後ろの壁にあたってしまった。 「あーらら」  前から聞こえたその声は何故かとても楽しそうだった。  
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