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始まりの朝
目覚めは最悪だった。
二日酔いでベットから起きた俺は、いつものように寝癖を直す。
俺の髪は肩甲骨の下くらいまであり、軍人ならば有り得ない長さだが、我が軍は他国と違い
完全な実力主義であり実力の見合った階級と待遇が与えられる、それがこの国“オロチ”である。
実力といってもそれはどんな能力でも良いのだ。
俺は現代の最新鋭兵器アドバンストビークルスーツ通称AVS。
簡単に言うと3m~5mくらいのパワードスーツだが、俺は十年に1人の逸材らしく、実力を認められている。
たかだか二十歳程度の俺が中尉なんぞになれたのもこの規律と兵器のおかげだったりする。
着替えながら昨日を軽く振り返るのが習慣な俺だが、二日酔いのおかげで思考が働かない。
しばらく唸っているとノックの音で我に帰る。
[兵士]
「おはようごさいます。ツクガミ中尉、起きておられますか?」
声からして俺の部下ではないので恐らくは基地司令の使いだろ。
[イツキ]
「起きている、朝早くからどうした?」
寝ぼけているのを悟られたくなかったので慌てて軍服を着込む。
[兵士]
「コバヤシ大隊長がお呼びです、至急司令室までお越しください。」
コバヤシ大隊長とは我が前線基地の最高司令官、ダイゴ・コバヤシ大佐のことだ。今は現役を退いたとは言え、五十歳間近にしてなお、俺より強かったりする。
[イツキ]
(やれやれ、朝から呼び出しとは穏やかじゃないなぁ)
と内心小言を呟きながら部屋を出た。
[兵士]
「おはようごさいます、ツクガミ中尉」
[イツキ]
(わざわざ同じことをまた言わくてもいいのになぁ)
と思い目の前の兵士に目を向けると軍服をしっかりと着込んだ幼さの残る少年だった、まあ入隊資格は十五歳以上の健康な男女と言うアバウトさなので特に不思議ではない。
[イツキ]
(どうせ、廊下を歩いてるところを大佐につかまってお使いを頼まれたのだろ。)
[イツキ]
「ん、おはよ。
呼び出しの理由は分かるかい?」
期待はしていなかったが聞いてみた。
[兵士]
「昨日の事で話しがあると伝えれば分かるから呼んできてくれ、と言われましたが、心当たりは無いのですか?」
…?
昨日…何かが引っかかる。
二日酔いな上に昨日の記憶が全く無いときた。
[イツキ]
(マズい…悪い予感がする)
結局その不安の正体が分からないままイツキは司令本部の建物へと入っていった。
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