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「あいつ……まだ怒ってんのかな……?」
竜之介は呟いた。
竜之介が言う「あいつ」と言うのは、竜之介の幼なじみの如月華夜の事である。
この如月華夜とは、料理教室で起こった事件以来、いまだに気まずい関係を続けているのだ。
「……このまま気まずい関係続けるのは感じ悪いしな……。
何か無いかな……?」
そう言って竜之介は商店街の前で立ち止まった。
「ん!?」
竜之介は商店街のくじ引きに目をやった。
一等<三日月旅館宿泊券をペアでプレゼント>
「これだ!」
竜之介は思わず叫んだ。
<商店街の中の店で1000円以上買い物をした方にくじ引き券を差し上げます。>
「……と、言っても買うものなんて……。」
と言いつつも、竜之介は辺りを見回した。
「本屋だ!」
竜之介は本屋に突入して、推理小説コーナーを探り回った。
「お!?これ読んだ事無い!!
あ!?これもだ!」
気が付くと竜之介の鞄の中身は新作の推理小説で溢れていた。
「これは忙しくなるぞ~。」
竜之介はいつの間にか今までの事を全て忘れて上機嫌になった。
「こちらくじ引き券になります。」
店員が竜之介にくじ引き券を渡した。
「あ……いっけね…。
忘れてた。」
竜之介はやっと今まで自分がしようとしていたこいだした。
「おっさん!
五回だ!」
「おっ!?気合い入ってるね~。
学校サボって福引きかい?」
「今はそんな事言ってる場合じゃねぇんだよ!」
竜之介はそう言い終わる前に力を入れてガラガラを回した。
「ほい、ティッシュ。」
「クソ!」
竜之介は更に回した。
「ほい、またティッシュ。」
「クソ~!!」
そう言って更に竜之介はガラガラを回した。
「あんたティッシュに好かれてるね。」
おっさんはニヤニヤしながら言う。
「うるさ~い!」
竜之介は怒りに任せてガラガラを回した。
「おっ!今度はスナック菓子だな。」
そのおっさんは更に気さくに笑って見せる。
「クソ~!!!微妙にレベルアップしやがってからに……。
最後の一回!」
竜之介は更に勢いよく回した。
「おっ!?一等の大画面TVだ!!」
「なんてこった……。」
(確かに大画面テレビは嬉しいけど……特等の旅館ペア招待券の方が良かったのに……。)
竜之介は自分の運の悪さを嘆きながら学校へ向かった。
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