始まりの事故

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来てしまった… 最初から病院に来る気だったのだが、いざ病院の前に立つと… 「息苦しい気がする…」 「えっ!」 渡貫槊也…恐ろしい男だ。今まで忘れていたけれど、首を絞められた恐怖が蘇ってくる。 八重樫が振り返って見つめる… 「水前寺さん、大丈夫?顔色が…」 「大丈夫だよ」 にこっと笑ってナースステーションに向かう。 「名前知ってるの?」 こそっと八重樫が耳打ちしてきた。聖奈はこくりと頷いていう。 「あの…水前寺聖奈と申します。渡貫槊也さんの面接許可をいただけますか?」 するとすぐに看護師は申し訳なさそうに言った。 「申し訳ありませんが…渡貫槊也さんは面会謝絶になってるんです」 それを聞いて「ほっ…」思わず安堵の溜め息が出た… 「残念だったね…」 八重樫が残念そうに呟く。 ここに居ても無駄なので、二人は帰ろうと出口に向かっていると、すぐに「あっ…」と言う看護師の声が聞こえた。 「あの!待ってください!!」 二人を呼び止める看護師の声が聞こえる。 「あの、もう一度お名前を伺ってもよろしいですか?」 「はぁ…」 気のない返事をして聖奈は名前を告げる。 「水前寺聖奈ですけど…」 その名前を聞いて、ほっと看護師は胸を撫で下ろしたように見えた… 「申し訳ありません…渡貫様から水前寺様が来られれば、帰すなと……申し付けられているんです」 看護師はそう言って、さりげなく聖奈の鞄を奪うと、渡貫槊也の病室に案内した。
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