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仕方なく聖奈は母親に連絡をとった。
どうせ許可は出ないだろう、そう思っていたので、別段抵抗なく電話をかける。
プルル…プルル……呼び出し音が鳴る。
「もしもし…聖奈、どうしたの?あなたが電話をかけてくるなんて…」
少し驚いた様子で母親が電話に出た。
聖奈はちらっと槊也を見た…さっきと変わらない様子でこちらを睨んでいる。
「お母さん、実は…事故で助けてもらった方の怪我が酷いんです。その人は、怪我が治るまで私の手を借りたいと言っているんですけど…」
「そうなの、せっかくの夏休みなんだから、手助けしてきたらどう?」
「いや…お母さん、最後まで聞いて下さい!」
聖奈の異見は母親に聞いてもらえないまま、電話は切れてしまった…
ツーッツーッ…虚しく会話の終了した電話が鳴る。
「……」
聖奈は呆然として切れたケイタイを見つめたまま固まった…
その様子を見ていた槊也は、満足そうにすくすと笑って聖奈に言った。
「どうせなら父親にもかけてみるか?」
母親がこれでは、父親なんて電話に出てくれるかどうかも分からない。
「いぇ…いいです」
そう言って聖奈はケイタイを閉じた。
完璧な人生の終了とともに…
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