世間知らず

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ぴょぴょ… ひよこ型の目覚ましが私に朝を告げる。 「けほっ…けほっ…」 何と目覚めの悪い朝だろう、あいつに首を絞められそうになる夢しか見ないなんて… 聖奈は病院から、どうやって家に帰って来たのか正確に覚えていない… 「最近よく記憶が飛ぶなぁ…」 多分普通に八重樫と話しながら帰ってきたに違いない。 制服はいつもの場所にあるし、鞄だって普段通り、毎日の朝と変わり無かった。 大きな旅行鞄以外は… 「なんでこんなものが…」 おそるおそる鞄を開けてみる… 中には数日分の服と、救急セットが入っていた。 「何これ?」 救急セットなんて持ってなかったはず… 「可憐(かれん)さん…」 急いで部屋のインターホンから、家政婦の名を呼ぶ。 「聖奈様、どうなさいました?」 50代程の女性の物静かな声が答えた。 「聞きたい事があるんです、ちょっと部屋まで来てくれませんか?」 「はい、少しお待ち下さい」 しばらくしてから、軽くノックをして可憐が入ってきた。 「可憐さん、この荷物…昨日私が荷造りしてましたか?」 鞄の中には、聖奈の服や、そうではない服がきっちり整頓されて納まっている。 「あの…それは…昨日奥様が帰られまして…」 可憐の話しから想像するに、どうやら聖奈が寝ている間に帰宅した母親が荷造りしたらしかった。 「どうしてそんな急に…なんで…」 思わず可憐に聞き返す… 「分かりません。ですが奥様はとても楽しそうに荷造りなさってましたよ」 嫌な予感がした… 「まさかね…」 槊也が母親に連絡を取ったはずがない、第一連絡の取りようがない。 リリリ…リリリ… 部屋の電話が鳴った、電話に表示されたのは…母親の名だった。
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