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「もしもし…」
母親の様子を探るようにして、聖奈は電話にでた。
「聖奈、ちゃんと用意しておかないと駄目よ…折角泊まりで介助するのに」
「えっ…泊まり?」
驚いて母親に尋ねる。
「そうよ、あなたは知らないの?昨日渡貫さんからお電話をいただいたの、お母さん嬉しくて…あなたの携帯番号とメールアドレスは伝えておいたから大丈夫よ」
「はぁ……」
「しっかりね。お母さんは17年間女子校はどうかなと思ってたんだけど、もう心配はないわね」
そう言うだけ言って、母親からの電話は切れてしまった。
「心配ない?!……携帯番号……?!」
♪~♪~
静かな部屋に、ケイタイの着信音が響く…
出ないでおこう、そう決心して聖奈はケイタイに背を向ける。
「聖奈さん着信に気付いているのに電話に出ないのは、相手の方に失礼ですよ」
諭すような可憐の言葉に、聖奈は「はぃ…」と言って従った。
いつも可憐にはかなわない、両親に代わって、ずっと面倒をみてくれた彼女の発言は、聖奈にとって絶大な効果を持っていた。
「もしもし…」
「おはよう」
思った通り…槊也からの電話だった。
「おはようございます」
緊張気味に聖奈が答える。
「メールにある住所が俺の家だ、一人で来れるか?」
「…行きたくありません」
聖奈自身驚くほど素直に拒絶の言葉が出た。
電話口で、くすくす笑う声が聞こえる。
「なら迎えに行くけど?」
「遠慮しておきます、それをネタに脅されたくありませんから…」
「じゃあ…なるべく早めにな、ばか女」
その言葉を最後に電話は一方的に切られた。
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