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「水前寺さん…!」
突然緊張したような声が聞こえてきた。
小走りで人込みをかきわけてこちらに向かってくる…
「八重樫(やえがし)さん…」
あぁそうだ…私は八重樫さんに呼ばれて道路に出たんだった…
まだ涙の余韻の残る目を拭いてから、聖奈は向かってくる彼女を見つめた。
「立っても大丈夫なの?くらくらしない?」
心配そうに八重樫は聖奈を支えるようにして傍に立った。
「救急車呼ばないと…」
そう言ってふらふらと歩き出す聖奈を止めて八重樫は言った。
「あのね、さっき近くにいた人が救急車呼んでくれたから、もう大丈夫だよ…」
それから「ごめんね…呼び止めなければよかった…」少し泣き声になりながら、八重樫は聖奈に言った。
「謝らないで…周りを見なかった私が悪いんだから」
そう言うと、聖奈はにこっと笑って、今にも泣きそうな八重樫を励ました。
救急車の到着は思っていたより早く、間もなく二人は病院に運ばれて行った。
途中少年は、向かう病院を指定したようだったが、聖奈にとってそんな事は気にならなかった。
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