始まりの事故

5/14
前へ
/159ページ
次へ
病院に着くと、少年はすぐに手術室へと搬送されて行った… その様子を聖奈は静かに見送ってから、傷の手当を受け、迎えを待った。 しばらくしてから、両親の代わりに家政婦が迎えに来てくれたのだが… 家政婦の強い希望で、明日精密検査を受けるため、一日入院することになってしまった… 「独りかぁ…」 一人で使うには、大きすぎるのではないかと思われる病室の一人部屋で、聖奈は呟いた。 「一日ぐらい大部屋でもよかったのに…」 聖奈は一人でいることには慣れているつもりだ。 いつもそうだった、熱を出したときも両親は講演会や仕事で家には居なかったし、今日だって…やはり来る事は叶わなかった。 カチッ…カチッ…と時計の秒針の音が部屋全体に響く… 今は眠れそうになぃ… 仕方なく、聖奈は今日一日の出来事を思い出してみた… 今日は事故を含め、初めて体験した事ばかりだった。 まずは「ブス」…初めてブスと言われた。 この顔に生まれて、今まで称賛の言葉しか聞いた事がなかったので、正直落ち込んでしまった。 次に「ばか女」…まさか成績が良くてもばかと言われる事があるなんて、思ってもみなかった、だからこれもまた聖奈を落ち込ます原因となってしまった。 そして…スカートの中を覗かれた、しかも覗いた相手は溜め息をついたのである! 「なんで溜め息なの…?!」 思わず声に出して言ってしまった… 聖奈の学校ではスカートのしたにスパッツ等を履く事が校則に盛り込まれている。 最近盗撮などが増えた事を理由に作られた、女子校らしい校則であった。 「うーん……」 複雑な心境で今日あった事を整理してみる… しばらく考えた後に、彼女なりの結論として「もう関わることはないし…あの時泣きそうになったのも、何かの間違いよ…」 いざとなつたら、親に任せればいいか… そう考え、深い眠りについた。
/159ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1317人が本棚に入れています
本棚に追加