始まりの事故

7/14
前へ
/159ページ
次へ
事故から5日が経った… 聖奈は事故から今までの事は詳しく覚えていない。 現場に一度も現れない少年に変わって、現場検証がどうだとか、揚げ句の果てには保険会社が絡んできて、いちいち記憶しておく暇などなかったのだ… 「ふぅ…」 数日ぶりに訪れた平穏に、思わず深い溜め息が出た。 代理人を立てるべきだったかなぁ… 何となくそんな事も考えながら、カレンダーをみた。 明日は7月15日…赤丸をして、終業式と書いてあった。 「そんな時期か…」 怒涛の5日間を過ごしてきた聖奈にとって、明後日から始まる夏休みは有り難かった。 結局、両親からそれぞれ一回づつ身の無事を確認する電話が入ったが、会うことは無かった… 「あの人…どうして来なかったんだろう」 ふと無礼な怪我人の事が頭をよぎった… 「警察の人が怪我の具合が良くないから来られないって言ってたけど…」 渡貫槊也…警察から聞かされた情報の中に、その少年の名前があった。 連絡先はあえて聞かず、両親からの命令で来たという男に書類など、事故に関する処理を全て任せた。 「もしかして怪我の具合がひどいとか…」 聖奈をかばって、槊也は事故に合ったという事になっていた。 だから、今の自分の命があるのは、彼のおかげ、どんなに嫌な奴でも少しばかり感謝しなければ…と聖奈は思っていた。 「明日、学校の帰りに病院に寄ってみよう…」そう心に決めて、聖奈は眠りについた。 しかし、一瞬見せたその優しさが、聖奈の命取りであった……
/159ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1317人が本棚に入れています
本棚に追加