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終業式も無事に終わり、聖奈が身仕度を整えて帰ろうとしていたその時…
「水前寺さん!」
八重樫が声を掛けてきた。
にっこり笑う彼女は、聖奈とは違うタイプの日本美人で、数々のミスコンに参加しては賞を総なめにしていた。
「一緒に帰りましょう?いいカフェを見つけたの」
行くかどうか一瞬迷った聖奈であったが、時計を見るとまだ1時だったので、3時までならと八重樫の誘いにのることにした。
八重樫の見つけたカフェは落ち着く雰囲気で聖奈の心を和ませた。
「事故の後…大変だったみたいだね…」
俯きながら八重樫は言った。責任を感じているらしく、その声は静かだった。
「大変…というより、男の子が来てくれなくて…それが困ったかな」
八重樫に気を使わせまいと、少し困った顔で聖奈は笑った。
「その人、怪我が酷いの?」
「多分そうだと思う…だから今日お見舞いに行こうと思ってるの」
それを聞くと、八重樫はしばらく考えた様子で黙り込んでから…
「ねぇ、私も行っていいかなぁ?」
八重樫からの予想外の提案に聖奈は驚いたが、すぐに否定した。
「ごめんね、八重樫さんは止めたほうがいいと思う。その男の子は汚い言葉を使うし、おまけに首を絞めてくるの、だから…」
そう言って八重樫の提案を断ろうとしたが、彼女には逆効果だったようだ…
「私…その人見てみたい!」
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