始まりの事故

8/14
前へ
/159ページ
次へ
終業式も無事に終わり、聖奈が身仕度を整えて帰ろうとしていたその時… 「水前寺さん!」 八重樫が声を掛けてきた。 にっこり笑う彼女は、聖奈とは違うタイプの日本美人で、数々のミスコンに参加しては賞を総なめにしていた。 「一緒に帰りましょう?いいカフェを見つけたの」 行くかどうか一瞬迷った聖奈であったが、時計を見るとまだ1時だったので、3時までならと八重樫の誘いにのることにした。 八重樫の見つけたカフェは落ち着く雰囲気で聖奈の心を和ませた。 「事故の後…大変だったみたいだね…」 俯きながら八重樫は言った。責任を感じているらしく、その声は静かだった。 「大変…というより、男の子が来てくれなくて…それが困ったかな」 八重樫に気を使わせまいと、少し困った顔で聖奈は笑った。 「その人、怪我が酷いの?」 「多分そうだと思う…だから今日お見舞いに行こうと思ってるの」 それを聞くと、八重樫はしばらく考えた様子で黙り込んでから… 「ねぇ、私も行っていいかなぁ?」 八重樫からの予想外の提案に聖奈は驚いたが、すぐに否定した。 「ごめんね、八重樫さんは止めたほうがいいと思う。その男の子は汚い言葉を使うし、おまけに首を絞めてくるの、だから…」 そう言って八重樫の提案を断ろうとしたが、彼女には逆効果だったようだ… 「私…その人見てみたい!」
/159ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1317人が本棚に入れています
本棚に追加