約束の日

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『5年後、お互いに忘れてなかったらまた逢おう…』 そう約束して別れた彼と彼女。 今日がその5年目…。 彼女は約束の場所へと歩いていた。 「優介(ゆうすけ)きてるかなぁ?」 呟く彼女の鼓動はバクバクと 周りに聴こえるんじゃないかと 疑われるほどに強く脈打っていた。 同じ頃…彼は一人満開の桜の下に立っていた。 『芽衣(めい)…来ないな…。』 何であんなコトを言ったんだろう。 1人呟いて思い出していた。 彼女が出て行き、ガランとした部屋… こんなにも広かったのか? と思った。 1日そしてまた1日と彼女のいない日々が続き… 部屋は散らかり、帰ると必ずと言って良いほど ついていた灯りは消えて冷え冷えとしていた。 彼女の存在がどんなに大きく温かかったのか…思い知らされた。 5年という月日は長かった。 何故5年後に会おうと言ったのか? 理由は忘れてしまった。 どうでも良いコトだったような気がする。 ちょっとケンカしてお互い距離を置こうかと言う話になり いつの間にか 5年後に… という話になった。 「…優介?」 その声でふと我に返る彼。 「芽衣?」 顔を上げると目の前には満面の笑みの彼女。 「久しぶりだねッ♪」 「あぁ。ホントに久しぶりだな。もう来ないかと思ってたよ。」 「わたし来たよ?約束だったでしょ。 忘れられなかったらまた逢おうって…。」 涙目の彼女。 「忘れてないよ?…1分1秒だって…忘れられなかった…。」 2筋の涙を流す彼女と 宥める様に微笑み語りかける彼。 「俺もだよ。…芽衣?」 愛おしそうに彼女の名を呼ぶ。 「…なに?」 「愛してるよ。誰よりも何よりも芽衣だけを…好きだ。」 「優介…。」 枯れかけた涙の泉が また潤い始める。 2人は、どちらから共なく手を繋ぎ、夕陽の桜並木通りを歩いて行った。 そして2人は語り合う。 どんなに後悔したか。 どんな5年間だったのか。 どんなに愛しているか。 その手を離さずに…繋いだままで…。
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