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暗くて狭い鏡の張られた部屋
どうしよう…
私は腕に掛けられた黒く肌触りの良いドレスを見た。
絶対私になんて似合うわけがない。そうおもうけど、ドレスは私を誘うようにただ私の腕の中でじっとしていた
私は唾をのみ、自分の来ていた服を脱いでドレスにゆっくりと腕を通していった。
ドレスはまるで魔法のようで
柔らかくて…暖かくて…
堅苦しくて…冷たくて…
空っぽの私に容量を与えた…
「やっぱりね、うさぎちゃん。似合ってるよ」
黒蝶は私が試着室からでるなり目を輝かせて私を上から下まで見回した。
「お似合いですよ、うさぎさん。」
トールも満足げにクッキーを上品に食べながら言った。
「生地は、ヴェルヴェットっていうのなんだよ。」
ヴェルヴェット…私はこの服を着ることが妙に心地よかった。いや、むしろこのドレスはシンデレラしか、履くことのできないガラスの靴のようなものにすら感じていた
「とても素敵な服ですね」
この服を着たことで、私は私じゃない感じがした。
この灰色の世界でたった一人色を持った気がした。
この服が欲しい…
頭の中に廻る声がただひたすらそれを訴えていた。
「はい、1ヶ月かけてつくった作品なんですよ。」
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