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ー小さいときの私はお嬢と呼ばれていた
私は両親にとってたった一人の子供だったから大切に育てられ
母は恐ろしいほど服に拘り私は常にブランドものを着て
一日が始まると、母は私の長くなった髪に櫛を入れ
丁寧に其の毛先まで撫で付け、髪を毎日可愛らしく結ってくれた
昼間は母と出掛けたりした何処へ何回行ったか分からないぐらいに
母は私を連れ出した
少し寒い春の公園
温かく冷たい夏の海
紅葉を纏った秋の山
真っ白に染まった冬のスキー場
私は駆け回り毎日へとへとになるまで遊んだ
一日が終われば折角できた髪を解き、私をお風呂へ入れる
たまに父が温泉へ連れていってくれるが、私は母とのお風呂が大好きだった
労るべきなのは母なのに私は母に労れるように静に髪を洗われた
そしてお風呂から上がれば食卓には良い匂いの夕食
新聞を開く父
好きなアニメ
幸福な家庭が其処にはあった
私は世界の全てが好きだった
素直で純粋だった私と稚拙ながらもクレヨンで色付けされた毎日
年を追う毎に色褪せ輝きを失う瞳
灰色はもう嫌だ…+
私はあの頃見たような真っ白な世界の中、目を開いた
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