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次第に傷は塞がった
人間って生き物にはきっと体に残された過去を消す
使い勝手のいい消しゴムみたいな道具があって傷を消したんだ
なんか不思議
暫くして私は病院から退院した
病院から出たとき私はその眩しさに目眩がした
沢山のグラデーションで彩られた世界が其処にはあった
灰色一色ではない
赤…青…黄…
色の三原色を元に数億もの組み合わせで作られた色の世界
あぁ、
あのときの私の瞳は死んでいたんだ。
無気力、無関心…それが私に灰色を見せたのだ
何故か無性に笑いたくなった…無性に走りたくなった
ロッキンホースで爪先立をしてみる
ぐらぐらと世界が揺れた
お気に入りの黒のレースで飾られたヴェルヴェットのドレスの裾を軽く上げてみる
背中に羽が生えた気がした
私は全速力で走った
つよくつよく羽を広げて
はやくはやく助走をつけて
パカパカと軽快に鳴り響く靴の音が心地好かった
髪を靡かせる風が
全てを照らす太陽が
全てが明るくて暖かくて
誰も信じないだろうけど
私は確かに
高いあの空に
舞い上がったんだ
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