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「ねぇ、見て。私ね現実が怖くなって何度も抜け出そうとしてたの…そんなときにこの店に来たの。」
彼女はフリルをふんだんに使ったシャツの袖を捲り白い手首にありありとついた傷痕を私に見せた。
傷の一つ一つは彼女の過去を痛々しく刻んでいて私は手首がいたくなった気がした
「もうこの傷は増やさないとトールと約束したの、」「えぇ、約束の代わりにあのうさぎを作っていただいたんです。クッキーはいかがですか?」
袖に傷口を隠す黒蝶…私にクッキーのバスケットを差し出すトール…
私と似た考え…現実への失望…
どうしてか分からないけど、彼等は私をこのつまらない灰色の街から連れ出してくれると確信した…
頷き差し出されたバスケットからクッキーを摘むと黒蝶が優雅に立ち上がり壁に掛けられたお洋服の中から一着黒いドレスを持ってきた
「うさぎちゃん、せっかくこのお店に来たんだから着てみたら?」
彼女の発した言葉に私は目が点になった。
「えっ…似合いませんよ!ドレスなんて…」
「いいから!ほら、絶対似合う!」
「でもっ!」
彼女は私の目の前にドレスを出してきた
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