第一章 きっかけ

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恭一に家まで送り届けてもらうと、すぐにお風呂に入り、倒れ込む様にベッドに横たわる。 眠りにつく前に携帯をチェックする。 新着メールが三件入っていた。 順番に開いていく。 零時五十二分。 さっき作ったメル友から。 名前やら趣味やら細かく書いてある。 適当に読んで次を開く。 一時三十分。 知らないアドレス。 武居聖。二十歳。設計事務所見習い。東京都在住。彼女なし。 メールにはそう書かれていた。 今時、この手の出会い系サイトでフルネームを名乗るその人に郁は興味を持った。 すぐに返信した。 メールありがとう。篠山郁。十七歳。高校三年生。埼玉県在住。彼氏なし。 そして最後のメール。恭一からだった。 また連絡するよ、お休み。 郁はそう書かれたメールを保護に設定して眠りに落ちた。 翌朝、目を覚ました郁はしばらくベッドの中でぼんやりした後、時計に目を向けた。 まだ学校には間に合う時間。 ベッドから出た郁はカーテンを開けながら電話を掛ける。 相手は佳織。 すぐに電話は繋がった。 一緒に登校する事を伝えると、すぐに電話を切って支度を始めた。 家を出ようとした時母に呼び止められたが、そのまま家を後にした。 駅に着いた時改札前にはまだ佳織の姿はなかった。 郁は昨日の出来事を、恭一の事を、早く佳織に聞いて欲しかった。 佳織に会うのが待ち遠しかった。 ウォークマンをのイヤホンを耳に付け、スイッチを入れる。 郁が二年ほど前から好んで聞いているアーティストの曲が流れた。 二曲めの曲が終わるのを待たずに佳織がやってきた。改札前の郁の姿を見つけると小走りになる。 佳織が先に声をかけた。 「おはよう。いくちゃん、今日は起きられたんだね、よかった」 郁はウォークマンを鞄にしまいながら話を続ける。 「毎朝寝坊はできないよ」 「まぁね、あたしも毎日一人で学校行くのはつまらないからさぁ。毎日ちゃんと起きて下さい」 そんな話をしながら二人は電車に乗り込んだ。 郁は待ちきれずにすぐに話し始めた。 恭一と会った事、彼の車に初めて乗った事、会話の内容、その時の気持ち。
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