あとがき~聖~

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一人の女の子に出会った。 彼女の行動は俺には理解に苦しむものだった。 まさか……こんなに好きになるなんて……。 自分自身、信じられなかった…。 彼女が笑うと嬉しかった…。 彼女が泣けば悲しかった…。 笑顔の可愛い女の子。 そんな彼女が好きだったのはオレンジジュース。 名前は郁。 どうしてあの時待てなかったのか…。 後悔してもし足りない。 その後何人かの女性と付き合ったけれど…うまくはいかない。 原因は俺。 きっと郁の事しか見ていないから…。 それは今も変わらない…。 神様、お願い…。 もし願いが叶うなら、俺を郁に会わせて下さい……………。 それから聖は無事に看護学校を卒業した。 少しの間、地元の病院で働き、今、転勤先の病院にいる。 どうしても人手が足りないと言うこの病院に配属されたのだ。 こちらに来るのは郁と離れて以来。 やはり思い出す。 院長室で書類を受け取り、説明を受けると、ダンボールに入れた荷物を持って廊下に出た。 これから荷物を整理して、挨拶に回る。 窓から外を見ると、気持ちの良い快晴。 聖はダンボールを持ち、歩き出した。 エレベーターを降りた時だった。 何かがいきなりぶつかってきたのだ。 聖は持っていた荷物を落とした。 「あっ…、ごっ、ごめんなさいっ」 何だか聞き覚えのある懐かしい声。 見ると、そこにはしゃがみ込み、荷物を拾い集める女性が一人。 聖は息を呑んだ。 その姿は、紛れもない。 ずっと…ずっと…… 恋しくて……… 愛おしくて……… 待ちわびたヒト…。 ーーーーー郁…?ーーーーー 顔を上げた彼女と目が合うと、俺の時間は……止まった…。 この手を取れば、もう離す事はできない…。 俺はもう、戻らない…。 この気持ちは本物…。 君を愛してしまったから…。 俺はもう、後悔したくない。
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