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恭一は郁の隣の家に住む二歳年上の幼なじみ。
小さい頃からいつも一緒に過ごしてきた。
兄の慎悟ではなく、恭一の後をついて歩いた。
郁は恭一が大好きだった。
皆が郁の事を"いく"と呼ぶ。しかし恭一だけは"かおる"と呼んだ。
それがとても嬉しかった。
自分が特別扱いされている様でどこか優越感すら覚えた。
恭一の車はスポーツカーだ。
貯金を叩いて最近購入したらしく、まだ傷一つついていない。
郁は初めて乗る恭一の車に緊張しながらドアを開けた。
乗ってみると助手席は意外と広かった。
「かおる、ドア閉めて。どっか行きたい所ある?」
「あっ、うん。別にないけど……まかせるよ」
恭一に急に聞かれたので返事に困った。
しばらくすると目的地が決まったらしい。
「じゃあいいとこ連れてってやるよ」
そう言って恭一は車を走らせた。
意外と安全運転をする恭一を見て郁は少しおかしくなった。
恭一は郁に見られている事に気づくと少し恥ずかしそうだった。
「そんなに変か、俺が運転するの」
「そんな事ないよ、…見とれちゃったのよ」
それは郁の本心。
思わず見とれてしまうほど恭一はかっこよく見えた。
「そういえば、この車、助手席に女の子乗せるのかおるが初めてだなぁ」
そんな事を言われると郁の中の特別という思いはどんどん強くなる。
何でもない素振りを見せるのはそれほど大変な事ではない。
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