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「彼女が出来ないから空いてただけでしょう?」
本当はすごくうれしい。嬉しくてたまらない。それでもこんな言葉しか出てこない。
「かおる、あんまり帰りが遅いとおばさん心配しないの?」
突然話題が変わる。
恭一は心配そうな顔でちらりと郁の方を見る。
「最近は何も言われないし、あたしの事なんて心配してないんじゃない?」
郁は何も言われない事に逆に感謝していた。
好きな時間に遊びに行く事もできるし、今こうして恭一といられるのも親に干渉されないからこそ。
「そんな事ないと思うけど。おばさんもだし、おじさんや慎悟だって心配してるって。もし郁が手に負えないお転婆娘で皆に見放されたとしても俺が心配してやるから安心しろ」
そう言うと恭一は郁の頭を軽く二回叩いた。
恭一はただ何気なく言っているのかもしれない。
郁はそんな風に言われる度に好きという気持ちが大きくなっていく。
恭一はずるい。
言葉で郁に魔法をかける。
いつでも手の届く所に郁を置いている事にきっと気づいていないのだ。
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