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「……ぃ…………」
遥か遠くにある光から、誰かの声が聞こえる…。
「……おい、美羽!」
「───…うわっ…!?」
心臓が爆ぜそうになった。
いったい、誰…!?
「美羽ってば、寝ぼけんなよ」
私が寝ている保健室のベッドの隣に、たっくんが立っていた。
「……そ、それはこっちのセリフだよ!」
そんなのたっくんが言えることじゃない。
「吐き気治ったから、教室戻ろっと」
腹部に掛かっている毛布を手でどかし、ベッドから下りた。
すると、後ろからたっくんの小さな声が。
「美羽に別れを言いに来た。」
「……………え…?」
なに……、別れを言いに来た?
「なに、私に不満があるの……!?」
私は瞳を潤ませて、たっくんの制服をつかんだ。
「……なんでよ!夏休みに遊ぶ約束いっぱいしてたじゃん!」
たっくんは気の抜けたように、ボソッと言った。
「……夏帆の方が好き。」
その名前…
さっき聞いた名前だ。
「誰なの、それ?どこの中学?それとも高校生?もしかして小学生?」
「夏帆は完璧。オールパーフェクト。可愛い。お前とは違う。いい性格してる。くびれきれい。脚細い。それから…」
「それ以上言わないで!!」
そんな、夏帆って子が好き…?
「お願い…。私から離れないで……」
「無理…、ばいばい…。」
冷たく言い放ち、保健室の扉に手をかけるたっくん…
「待って、行かないで…!!」
「……………………………………羽……」
誰?話しかけないで!
たっくんが行っちゃうじゃん!
「───…起きろ美羽ッ!!」
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