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「───…うわッ…!」
心臓が爆ぜそうになり、私は、流汗淋漓とした身体をベッドから起こした。
「なにッ!?たっくんは…?」
「このバカ!寝ぼけんな。学校中捜したんだぞ?」
その言葉は…
私は自分の頬をつねってみた。
「痛っ…!」
夢じゃない。
今度は、夢じゃないな。
「寝ぼけんなは私のセリフだよバカっ!!」
腹部に掛かっている毛布を手でどかし、白いベッドから静かに下りた。
ガラガラ──
「達也先輩、こんな所に居たんですかー!?」
安堵の色に包まれた保健室を揺るがす、悠太の雷声。
愛美は一緒じゃないみたいだ。
「悪いな悠太…。ちょっとだけあっちに行っててくれる?」
悠太の背中を押し、保健室から出そうとするたっくん。
「いやっスよ!先輩が部活辞めちゃったら寂しいんスよ、辞めないで下さいよ!」
必死で、それに対抗する悠太。
その悠太に、私は、行動を遮障するように、怒鳴り散らした。
「あっちいって!!!」
私は、やるときはやる女だ。
「──…この人怖えーよッ!」
悠太は保健室から姿を消した。
再び静寂に包まれた空間のなかで、静かに聞こえたたっくんの声。
「男らしいな、美羽…。」
その言葉に、私は一瞬にして、顔を紅潮させた。
「まぁ、とりあえず聞いてくれよ…。」
私をイスに座らせ、真っ直ぐに私の瞳を見てくるたっくん。
「話なんて聞く気ないよ!夏帆ちゃんとラブラブでいいですねー」
完全なる、負け惜しみだ。
別にいいけどね。
「夏帆は、前にも話した元カノだよ…。」
その言葉に、私は瞋恚の炎を、隠し切れなかった。
「今の彼女より、元カノの方が好きですか?そうですよねぇ。だって夢でキスするぐら……」
たっくんの唇頭に口を塞がれ、言葉が出なくなった。
生々しく、あったかい、たっくんのくちびる。
やっぱり、たっくんとのキスは四肢が思い通りに動かなくなるほど、心地よかった。
でも、今は違うよ。
「───…やめてッ」
私は、様々な感情を脳に残し、たっくんを突き飛ばした。
「その魅力的な唇は夏帆ちゃんに捧げてあげれば?」
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