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暫く、細い裏道を富樫の背中を見ながら、二人は歩いた
すると、人一人通れるか?通れないか?と言う、防空壕跡が三人の前に現れた
「まだ、あったのですね
この防空壕跡
懐かしいわぁ~」
と一瞬、香織は立ち止まり、独り言のように呟くと、また歩き出した
「奥様が、山本家に嫁いで来て、大奥様と大喧嘩なさって、家を飛び出した時も
旦那様との大喧嘩の時も、この防空壕を通り抜けて、奥様を実家へとお送りました
今では、懐かしい思い出です」
と富樫は、目を細めながら、慎重に防空壕を通り抜け始めた
香織と華子も、足元に気お付けながら、防空壕を通り抜け始めた
距離にすると、十メートルあまりだが、足元は暗く、滑る
華子は何度か、足元を滑らせては、黄色声を上げた
防空壕を富樫は先に通り抜けると、用意してあった、車の後部座席のドアを開け、二人を待った
香織、華子と、その防空壕から、姿を現した
香織は華子に先に乗るように促し、華子は運転手側の後部席に、香織は助手席側の後部席に座ると、富樫は、後部席側のドアを静かに閉めた
そして富樫は運転手席に乗り込み、静かに車を発進させた
車が発進すると
「奥様っ‼
キヨ先生の病院で、宜しいのですか?
キヨ先生は、引退なさって孫の真子さんが先生になってますけど
それでも、宜しいのですか?」
と富樫は運転をしながら、香織に聞くと
「まぁ、真子さんが
あの、お転婆の真子さんが
取り敢えず、キヨ先生にお逢いして、それから決めます」
と香織は嬉し懐かしそうな表情を覗かせながら、富樫に答えた
二十分くらい、車が走ると、のどかな田園風景が辺り一面に広がって来た
そして車は一軒の藁葺き屋根の大きな屋敷へと入って行って、富樫はそこに車を停めた
「ここが、病院なんですか?」
と目を大きく見開いて、驚くように華子が言うと、香織と富樫は見合って、そして大声で笑った
「病院と言えば、病院だが・・・
ここは、この村一番の産婆さんの家、そして私が一番信頼している、キヨ先生のご自宅ですよ
病院は、この家の裏手にありますよ
さぁ、降りましょうか」
と言うと、富樫は華子の座っている席のドアを開け、華子が降りると、反対側に行き、香織の座っている席のドアを開けた
香織が降りると
「泣き虫お嬢っ‼
久振りだな
こんな、もうろくお婆に何の用だっ‼」
と鶏に餌をやりながら、一人の老婆が笑いながら言った
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