思い出交換

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香織は、その老婆に近付き、一礼すると 「キヨ先生、お久振りです 相変らず、お元気そうで」 と言い、華子を手招きし、香織の横に立たせると 「水木 華子と言います」 と香織が手を差し、華子を紹介すると、キヨ先生と言われた老婆が、華子のお腹を擦ると 「妊娠しているいるのか 四ヶ月目に入ったばかりか 華子とやら、少し顔色が悪いのぉ これっ‼泣き虫お嬢っ‼ 鉄とカルシウムを、多めに食べさせてやれっ‼ わかったか」 とキヨ先生と言われる老婆は華子の顔を見ながら、香織に言うと、香織は小さく頷き 「実は華子の事なんですけど、 キヨ先生っ‼ キヨ先生が子供を、取り上げてくれませんか?」 と香織が、キヨ先生に言うと 「引退した、わしに子を取れと 何か、事情であるのか? 泣き虫お嬢っ❗」 とキヨは目を細めて、香織に尋ねると 「はっ、はいっ‼ この子は茂樹の、最後の子なんです 私にとっては、いくら憎んでも、憎みきれない愛人の子 しかし、私もこの子を突き放すほど、若くはない ならば、この子の行く末を見るのも、面白いでは・・・ と思い、キヨ先生にこうして、お願いに参ったのです」 と香織もまた、目を細めながら、華子のお腹を優しいく手で擦り、キヨに言った 「そのお前の、余興にこのお婆も加われと こりゃ、わしも、もうろくしたものじゃ あの、泣き虫お嬢も強くなっものじゃ 一幸が風邪引いた時も、浩二が擦り傷を作った時も、博之が注射を嫌がった時も顔をくしゃくしゃにして泣いた、お嬢がのぉ~ 強くなっものじゃ わかった、力を貸そう 最後のお婆の仕事として、あの世へ良い土産話が出来た 華子とやら、わしが付いたのじゃ お主は、要らぬ心配なぞせんでいい 元気な子供を産む事だけを、考えろ」 とキヨが言うと、 「ありがとうございます」 「ありがとうございます」 と香織と華子は深々と頭を下げた 「毎月、朝の六時に山小屋に居る 富樫が知ってる筈じゃ 来月、そこで会おう 万が一緊急の時は、ここに来るが良い」 と言うと、キヨは家の中に消えて行った 香織と華子・冨樫の三人は、キヨの姿が見えなくなるまで、深々と頭を下げていた
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