思い出交換

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と華子は静かに、話し終えた 「この一枚の写真がねぇ 茂樹とあなたを、結ぶきっかけになるとはねぇ 男と女の縁って言うのは、不思議なものだねぇ それに、私は弱い人間だよ 華子の方が、私より何倍も強くなる素質があるよ 何せ、その歳で子を一人で産み育てる 強くならなきゃね」 と建前を暖かい眼差しで香織は華子に言うが、香織の性格だ、本音は腸が煮え返る思いで、華子の思い出話を聞いていたに違いな 華子は華子で、香織に茂樹との思い出話を聞かし、建前では志雄らしい女性を演出しながらも、何時の日にか、香織の座を奪い取る気持ちも心の奥底で燻っていた 「華子っ、荷物を片付けたら、居間に来て下さい 早速、家政婦の研修を始めますからね その子の為にも、しっかり、働かないとね」 と香織が華子に言うと 「はいっ‼奥様っ‼」 と若く通るような声で、香織に華子が答えると、香織は立ち上がり、茂樹の書斎を後にした 二時間後 華子は香織の待つ、居間に入って来た 香織は華子に、テーブル席の椅子に就くように促し、華子が椅子に座るのを確認すると、華子の前に写真を十枚並べ置いた 「山本家を紹介するわ これが息子達の家族構成よ 一番左側が、長男の一幸と嫁の弥生 そして、これが孫の晴海と健 真ん中は、次男の浩二と嫁の静香 孫の宏 一番右側が三男の博之と嫁の佳子 孫の剛、健二、百子 この家に、よく訪れるのは、この十名ね 長男の嫁の弥生と三男の博之には、特に気お付けるのよ 弥生は、私と同じで気が強く、我が儘 そして何より、謝るのを嫌う人 三男の博之は、口が巧いから、騙されない事 まぁ、小心者だから正面切って来る事はないけど そして、三人の息子ともパラダイス・グールプの重役達だから、口の聞き方には、気お付けてね その辺は華子は、芸者だったから礼儀作法は、一通り知ってるわよね」 と香織が華子に言うと 「はっ、はい 三男の博之さんは、どこかで、おみかけしたような」 と華子は香織に言うと 「博之ね 多分、子供の頃にバラエティー番組か?ドラマの端役で、見たんじゃない 一応、芸能人だから」 と香織が言うと、華子は首を捻りながら、必死に思い出そうとしていた 「まぁ、来週には嫌でも、この六人には会うから それまでに、色々、覚えないとね」 と香織は笑顔でそう言いながらも、心を鬼してこの六人と対峙しなければと思い 華子もまた、香織の怖さを目の当たりにする
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