プロローグ

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古くて大きな、お屋敷だ その屋敷の廊下を、歩幅が狭い女性が、ゆっくりと静かに進んで行く 年の頃は、六十歳くらい? 黒く艶のある髪だが、伸ばしては無く短髪だ そしてその顔の皺が深く、掘り込まれていて、貫禄が漂うな、顔だった 背は低く、百五十くらい、痩せていてた 冠婚葬祭なのか? 黒い紋付の着物のを身に纏、姿勢を正し、歩いて行く その女性が、立ち止まり、障子の襖を開けた 襖を開けると、その部屋に二、三十人の人が集まっていた そして、幾つかのグールプに別れ、小さな声で談笑していた 初老の女性は、構わずに上座に就くと、座布団の上に座った クロブチ眼鏡を掛けた、雪だるまのような、中年の男がその初老の女性の傍に近寄り、両手を数回叩き合わせた すると、今までの談笑が消え、そして初老の女性と向き合う形で、五人づつの六列に整然と座り始めた 「それでは、故人 山本 茂樹様の遺言をお伝えします 私は、進行及び執行役を喪主 山本 香織様から依頼された、石川弁護士事務所の石川 匠と申します では、資産価値の二十分の一を、我が兄弟に分与する 一つ、残りの資産価値の半分を妻、香織に分与する 一つ、残りの資産価値の三分の一ずつを息子達に、分与する 尚、骨肉の争いを防ぐ為に、妻、香織に土地ならびに、屋敷を与え、それ以外は妻、香織から現金で受け取るように 最後に不服を申す者には、遺産を放棄させるほど、罰が下ると心に留めておきなさい」 と石川が言い終わると、 「不服のある者は、今すぐ、申し出なさい」 と鋭い香織の声が、部屋に響き渡った 香織の鋭い眼光に、皆は怯え、押し黙ってしまった 「弥生、静香、佳子 御苦労様、私からの気持ちだ 受け取ってくれ」 と言うと、弥生、静香、佳子の順で立ち上がり、香織傍に行くと、香織は着物の合わせから、白い封筒を取り出すと、それぞれに手渡した 「これからも、馬鹿息子達を頼むぞ」 と香織が言い、一礼すると、弥生達も一礼した 「皆もご苦労であった 故人、山本に代わって、礼を言うぞ ありがとう では、客間に宴を用意してある 何もない、田舎だがどうぞ、それなりのご馳走を用意してある では、解散っ‼」 と言うと、そこにいた者達は、それぞれに客間に移動し始めた 三組の息子夫婦、以外は・・・
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