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三男の博之が、それに続けてとばかりに、話し始めた
「母さん、融資の件
なんとか、ならないの?
母さんが、引退してからは渋くて渋くて
来月、チェーン店に対抗して、リニューアル・オープンを画策してたんだけど
八角銀行が、融資額を半分いや、四分の一ならと、ケチって来たんだ
お願いだよ、母さん
一言、八角銀行に言ってくれよぉ~」
「お願いします、義母さん」
と情けない表情で博之は、佳子と共に、頭を下げ、香織に懇願した
「息子がさぁ~
来年、アメリカに留学したいと言うんだ
アメリカの大学で、経済を学んで来たいと言うんだ
留学自体は、ホームステイだから、お金が掛からないんだけど
息子が、帰って来たら、俺の店も、リニューアルして大きくしたいんだ
その為にも、今は我慢して土地だけでも確保しておきたいんだ
だから、母さん
八角銀行に、融資を切らないでと、頼んでよ」
と呟くように、浩二が言い
「私に学がないから、浩二さんに迷惑かけてしまって・・・
もっと、経済学を学んでおけば良かった」
と悔しいそうに言った
「母さん
この家を、担保に
お願いだよ、母さん」
と博之が香織に甘え始めた
「浩二さんも、博之さんも、私のお父様の銀行に融資を断れたからって、お義母様に泣き付く事ないでしょ
それに、二人の企画書は、浩二さんのは、面白味がないし、博之さんのは面白味があるけど、採算が合わない
あんなんじゃ、通るものも、通らない
もう少し、真面目にお店を経営して下さい」
と弥生は、義弟の二人を一喝した
「そう言うなら、義姉さん‼
この家、何で必要なんだよ
俺達に、譲ってくれたっていいじゃないか」
と三男の博之が、弥生に食い付いた
「三億は、用意できたのか?
それとも、諦めて帰るのか?
お前達、何もわかってないなぁ~
私は、三億を用意しろと、言ったのだ
それ以外の話は、知らん」
と静かに香織は口を開いた
「母さん、三億なんて出来る訳ないじゃないかぁ
大体、この家・屋敷にそんな価値があると思えないし
それよりなにより、俺達は家族を養い守るので、精一杯なんだよ
三人で、一億五千万を用意するのが、精一杯なんだよ」
と一幸は、怒鳴るように香織に言った
そんな一幸の言葉を、香織は笑みを浮かべながら、静かに受け止めた
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