母、強し

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それまでの、パラダイス・グループの会議と言えば 周りの意見に波風を立てないように、常に周りを見ながら相槌を打つ、浩二 自分の意見は有るもののもの、その意見を言わずに、心の中にしまっていた、博之 そしてどんな意見にも、口を出し、仕切りたがる一幸 そんな三人が、弥生の一言で、本気で議論し始め、尽くし切れない程、議論を尽くし続ける あっと言う間に、一時間が過ぎ、二時間が過ぎる 二時間が過ぎた頃、弥生の携帯が鳴動した 「もしもし、山本ですけど」 と弥生が出ると 「加山だ、加山 護だ」 と相手が名乗った 「おっ‼お父様、お父様 どうかなさいましたか?」 と弥生が、不思議そうに答えると 「今、八角銀行の安田頭取から、電話があって、パラダイス・グループの連帯保証人として、八角銀行相談役の安田様がなると言われた 但し、融資額の四分の一だがな しかも、条件付きでだ」 と加山は、娘の弥生に言った 「安田様って、香織義母様の実兄の? 元八角銀行総頭取の?」 と目を丸くして驚いた口調で、弥生は父の安田に言うと 「そうだっ‼ あの安田様だ よく、あの安田様が、四分の一でも、首を縦に振ったものだ まさに、八角銀行が背後に回れば"鬼に金棒"だ だが、そう喜んでもいられぬ 条件付きの、"諸刃の剣"である事も、忘れてはならないぞ」 と加山が弥生に言うと 「で、お父様? その条件とは? 第一に、現在、実妹・香織様が住んでいる、家・屋敷に、今後一切、口を出さぬ事 後は、詳細の条件に関しては、追って書面にて、パラダイス・グループに送るそうだ 弥生、一幸様と夫婦一丸となって、頑張りなさい」 と言い終えると、加山は電話を切った 弥生は笑い出した、笑いながら涙を流した 弥生の言葉では動かなかった、お父様のマイセン銀行が、義母様の香織の一言で動いたのだ 「完敗、私の完敗だわ 悔しい、悔し過ぎるわ 私も義母様のようになる なって、この家を、私のものにしてみせるわ きっと、いつかは」 と思うと、三人の前に出て、更に発破を掛け始めた 三人は、弥生の気合いに、気圧されて、更に無い知恵を絞り始める 「パラダイス・グループを磐石にする為に、鬼なろう」 弥生は改めて、香織義母様の強さに、敬意を払った
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