思い出交換Ⅱ

5/5
前へ
/80ページ
次へ
数分後、その年長のウェーターが、料理を運んで来た "ナポリタン" 華子はその料理を見ると思わず、目を見開き、その言葉が出そうになった その年長のウェーターは、その料理を香織と華子のテーブルの前に一皿づつ置くと、振り返り去って行った 「茂樹が大好きだった、ナポリタン どうぞ、召し上がれ」 と香織はが落ち着いた、静かな口調で行った 「華子、ここはねぇ 私と茂樹が、最初にデートした場所なんだよ 昔は、ここはこんなに広くて高いショッピングモールではなく、五階建てのこじんまりしたデパートだった そして、そのデパートの屋上で茂樹と会い、こうやってナポリタンを食べて、ソフトクリームを食べる と言うのが、茂樹とのデートのお約束だった 勿論、当時は私が作った、ナポリタンだったがな そして何時しか、時代が流れて、そのデパートが潰れ、このショッピングモールになった時は、茂樹と一緒に寂しく思ったものさ そして、月に一度、ここに二人で来ては、ナポリタンを食べるようになった 昔を懐かしむ為にねぇ 華子も、茂樹にナポリタンを作ったのかい?」 と香織は華子に尋ねると 「はいっ‼ ケチャップを、これでもと言うくらい、ナポリタンに掛けて召し上がっていました そして、口の周りにをナフキンで拭き取り、子供ような笑顔で 「美味しいかったよ」 と言ってくれました たまには、違うパスタも如何ですか?とあの人に言うと、あの人は黙って、首を横に振り、虚を見つめてました」 と言うと、どちらともなく笑い出し、そしてナポリタンに箸を付け始めた そして、二人がナポリタンを食べ終わると、それを年長のウェーターが確認すると、バニラソフトクリームを二つ持って来て、テーブルに置くと、食べ終わった皿を持って、去って行った 「美味しいそう‼」 と華子が言うと 「茂樹は、何時もチョコとバニラのミックスのソフトクリームだったんだかな」 と香織も少女のように笑顔になり、華子に言った 「あらっ‼ 私と居る時は、何時も苦い緑茶と和菓子が定番でした 特に、たいやきは喜んでいました」 と華子が言うと 「茂樹も案外、恥ずかしがり屋だからな 前に、孫達とレストランに食事に行き、自分だけソフトクリームを頼めなかったとぼやいた時が有ったな」 と華子に言うと 「本当ですか?その話?」 と華子が聞き直すと 「本当だっ‼」 と言うと、二人は見つめ合い、吹き出し笑っていた
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加