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数分後、その年長のウェーターが、料理を運んで来た
"ナポリタン"
華子はその料理を見ると思わず、目を見開き、その言葉が出そうになった
その年長のウェーターは、その料理を香織と華子のテーブルの前に一皿づつ置くと、振り返り去って行った
「茂樹が大好きだった、ナポリタン
どうぞ、召し上がれ」
と香織はが落ち着いた、静かな口調で行った
「華子、ここはねぇ
私と茂樹が、最初にデートした場所なんだよ
昔は、ここはこんなに広くて高いショッピングモールではなく、五階建てのこじんまりしたデパートだった
そして、そのデパートの屋上で茂樹と会い、こうやってナポリタンを食べて、ソフトクリームを食べる
と言うのが、茂樹とのデートのお約束だった
勿論、当時は私が作った、ナポリタンだったがな
そして何時しか、時代が流れて、そのデパートが潰れ、このショッピングモールになった時は、茂樹と一緒に寂しく思ったものさ
そして、月に一度、ここに二人で来ては、ナポリタンを食べるようになった
昔を懐かしむ為にねぇ
華子も、茂樹にナポリタンを作ったのかい?」
と香織は華子に尋ねると
「はいっ‼
ケチャップを、これでもと言うくらい、ナポリタンに掛けて召し上がっていました
そして、口の周りにをナフキンで拭き取り、子供ような笑顔で
「美味しいかったよ」
と言ってくれました
たまには、違うパスタも如何ですか?とあの人に言うと、あの人は黙って、首を横に振り、虚を見つめてました」
と言うと、どちらともなく笑い出し、そしてナポリタンに箸を付け始めた
そして、二人がナポリタンを食べ終わると、それを年長のウェーターが確認すると、バニラソフトクリームを二つ持って来て、テーブルに置くと、食べ終わった皿を持って、去って行った
「美味しいそう‼」
と華子が言うと
「茂樹は、何時もチョコとバニラのミックスのソフトクリームだったんだかな」
と香織も少女のように笑顔になり、華子に言った
「あらっ‼
私と居る時は、何時も苦い緑茶と和菓子が定番でした
特に、たいやきは喜んでいました」
と華子が言うと
「茂樹も案外、恥ずかしがり屋だからな
前に、孫達とレストランに食事に行き、自分だけソフトクリームを頼めなかったとぼやいた時が有ったな」
と華子に言うと
「本当ですか?その話?」
と華子が聞き直すと
「本当だっ‼」
と言うと、二人は見つめ合い、吹き出し笑っていた
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