深夜の訪問者

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長男の一幸が妻の弥生に促されると 「母さん、一人でここに住む気? 一人じゃ、広いし、一緒に住んであげるよ」 と一幸は、もじもじしながら言うと 「一幸、その気持ちだけ、十分 ありがとう」 と香織は、軽く躱した 「じゃ、土地・屋敷を俺達、兄弟に預けてよ 悪いようにしないからさ」 と次男の浩二が言い 「貸してくれるだけでいいから、お願い 母さん」 と末っ子の博之が、続けて言ったが、香織は首を小さく左右に振るだけだった 「お母さん、一人、ここに残せないわ 長男の嫁として、母さんの面倒を見させて お願い」 と弥生が言うと 「義姉さん、ずるいわ 私こそ、母さんの面倒を見るわ」 と浩二と顔を見合せながら、浩二の妻の静香が言った 「皆の気持ちで、十分 ありがとう」 と言うと、香織は深々と頭を下げた 「お母さん、お願い うちは、義姉達と違って、火の車なのよ まだ、子供が小さいし だから、お願い 土地、屋敷を譲ってよ」 と博之の妻の佳子が、懇願するように言うと 「母さん、ライバルのチェーン店が、うちの街にも進出して来て、売り上げが徐々に減ってるんだよ」 と続けて、博之が言った 「博之、お前のところは、公立だろっ‼ うちは、二人とも私立なんだ それに来年は、上の子が受験なんだ だから、三人で仲良く 抜け駆けは、ずるいぞ」 と一幸が、博之を叱りつけた 「母さん、お願いだ 家、屋敷を譲ってくれ」 と一幸が言うと、六人は深々と頭を下げた 「どうしても、と言うなら仕方ない 譲ろう 但しだ、資産価値の半分、私の取り分、三億 一週間以内に、耳を揃えて、ここに持って来い 一人、一億だ 出来ない事はあるまい いいな、一週間以内 びた一文、まける気はないからな 出来ないのら、諦めろ 肝に銘じて、稼いで来い」 と香織は六人を、突き放すように言うと、立ち上がり、さっさと客間に向った 「さっ、三億 ちょっ、ちょっと待ってよ 母さん」 三人兄弟は、慌てて母親の香織を、引き止めようとしたが、香織は取り合わず、足早に客間に行き、接客し始めた 三人兄弟は、途方に暮れた 一人、一億と言う、ノルマを達成しないと、家・屋敷が手に入らない しかも、母親の香織は兄弟の企みに感付いている 三人は、携帯を掛け、三億を掻き集める算段を始めた
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