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丁度、石川と入れ替る形で一幸の部下の阿部が入って来て
「社長、お時間です」
と一幸に向って言うと、博之夫婦、浩二夫婦と順に客間に向った
そして、一幸が歩き出したが、妻の弥生がぐずり出して、その場を動こうとしなかった
そんな弥生を一幸は宥めながら、客間に向った
既に、香織は客間の上座に静かに座っていた
博之、浩二、そして一幸が座ると、客が集まり出した
そして客が全員、座り終わるの確認すると、一幸が立ち上がり
「今日は、私の父、故山本 茂樹の四十九日法要にお集まりの下さり、ありがとうございます
何も無い、田舎でございますが、宴を一席、設けましたので、故人を偲んで下さい
お願いします」
と一幸が言い終わると同時に、三人兄弟の妻達が客間に入って来て、客達に酒を酌し始めた
山本家の嫁三人衆の酌となれば、客達も盛り上がり始め、それに輪をかけるように器量良さでは、弥生と佳子が、気立ての良さでは、静香が、その場を盛り上げ始めた
そして、宴も一時間も過ぎると、香織と一幸は、客間よりも、玄関先でお客を見送る方が多くなった
客間の客がいなくなるのを確認すると、三人兄弟は母親の香織に申し訳なさそうにしながらも、職場へと行き、弥生と佳子も子供が帰宅するとの事自宅へと戻った
香織と静香だけが、実家に残り、後片付けを始めた
夕方頃になると、静香も自宅へと戻って行った
古く広い家に、香織だけが残ると、さすがに静けさが勝り、香織の心の隙間に、淋しさが入り込もうとする
だが香織は、その淋しさにいつしか慣れてしまい、今では、その淋しさが心地好くなっていた
香織は、夕食の準備をし、食べ、そして、お湯を貰って、浴衣姿で涼む
二、三時間、涼むと、香織は床に就き始めた
二、三時間も、寝ただろうか?
急に、お勝手口の方から、ドアを叩く音が聞こえ、香織は起き上がると、お勝手口の方へと足早に向った
そして
「奥様っ‼奥様っ」
とドアを向こうから、香織を呼ぶ声が聞こえると
「富樫かっ‼
どうした、こんな夜分遅くに‼
今、開ける
ちょっと、待ってろ」
と香織がお勝手口の鍵を開け、ドアを開けた
開けると、そこには夜分と言うのに、スーツをパリッと着熟した禿げた頭にビール腹の中年の男と、二十歳そこそこの女が立っていた
「奥様、連れて参りました
この女子で、ございます」
と富樫と言う中年の男が言うと、香織は目を見開いて、その女性を見つめた
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