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「さ、早く見に行こう」
しかし、うきうきと肩を弾ませ外に飛び出してしまうラジウ。陽気な彼に続いて子ども達も楽しそうに飛び出した。これではもう、どうにも止めることは不可能のようだ。クレクは仕方なく彼等に人指し指を立て、静かにと警告をした。彼等はそんなクレクの真似をしてシーっと言う。どうやらその点に関してはしっかりと理解しているようだ。
騒ぎのする方へ音を立てずに移動すると、広間に出た。ラジウ達は壁際からそっと中を覗き込む。広間には大勢の人がいた。身なりは品の良いもの、ボロボロなものとそれぞれだ。しかし、顔は皆
「うわぁ……三流悪役っ」
である。
ラジウの言葉に小さく乾いた笑いをしたものの、クレクは真面目な顔に戻り観察している。
そんな緊張が伝わったのだろう、ラジウも口をきゅっと結ぶと、クレク同様じっと広間にあつまる三流悪役を見た。
その時
ごんっ!
「ぃ!?」
いきなり彼等の後ろでぶつかる音がした。ラジウは思わず身をすくめ小さく声を出してしまう。なんとなく嫌な予感がし、振り返るのをためらうが、仕方なく少しの間を置き、そろりと後ろを振り替えった。
「ふぇ……」
そこには、座り込んで今にも泣き出しそうな幼い少女がいた。この一番年下の少女が転んで、さっきの音をたてたようだ。額がうっすらと赤い。彼女はラジウ達が見守る中、目に溢れんばかりの涙を溜めて、大声を出そうと息を吸った。
彼女以外の全員が慌てた。
こんなところで泣き叫ばれたら、広間にいる人相の悪い奴らに見つかるだろう。そしたら、どうなってしまうのだろうか?そんな疑問がラジウの頭のなかに浮かんだ。
少女が大きな口を開ける。ラジウは手をばたつかせるだけ。混乱して何をしていいのかわからないのだ。
ぼふっ
少女の泣き声が出るっ!そう思った瞬間、鈍い音が彼等の耳に届いた。
ラジウはびくついた時に閉じてしまった瞳をゆっくりとこじ開ける。開けた視界の先にはラジウよりも年のいった少年が彼女の口を片手で塞いでいた。
もごもごと幼い少女は声を出そうとしているが押さえられているため、くぐもった声しかでない。
「妹がすいません」
少年は苦笑って小さく呟いた。ラジウも頬を引きつらせながら釣られて笑う。どうやら、少女が声をあげるのは防げたようだ。ほっと安堵した空気が辺りに流れた。
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